大蔵省の2018年第1半期における政策結果報告によると、2018年第1四半期におけるモンゴルの実質GDP成長率は6.1%で、5回にわたるIMF/EFF措置の政策評価で好評価が得られた。予算収支に関しては、129億トゥグルクと5年ぶりの黒字を計上した。貿易収支が8億2,230万ドルの黒字で、直接投資残高が前年同期比85%増の6億5,660万ドルに達した。外貨準備高は約30億ドル。債務負担が再編成された点などを背景に、信用格付け機関Fitchは、モンゴルの信用格付けをB(Stable)に引き上げている(2018年7月)。

<債務不履行を逃れる>

2012年1月時点でモンゴル・トゥグルクの対ドル相場は1,395トゥグルクだったが、急激に進んだドル高の結果2017年1月には1ドルほぼ2,500トゥグルクで売られるようになった。10億ドルを超える対外債務が満期を迎える2017年には、ドルの流出によって更にドル高が進むと懸念されていた。

しかし、EFF措置実施の確定や資源価格の復活を背景に、対外債務の再編成が順調に行われた結果、ドル高に歯止めがかかった。2017年にはトゥグルク高の傾向が見られ、2018年3月25日時点で1ドル2396.35トゥグルクの相場に落ち着いた。

開発銀行が2012年に発行した5億8,000万ドルの国債が2017年3月21日に満期を迎えた。その返済に充てる予算源に欠けていたため、債務不履行のリスクがあると見られ、国際市場で売買されている政府債権の利息が一時期20%を超える時期もあった。しかし、EFF措置の事前合意に成功したため、中国とのスワップ契約を3年延長し、6億ドルの「フラリダイ」債権を発効することによって債務を再編成できた。フラリダイ国債の利率が8.750%で、2016年4月に発効したマザーライ国債の10.875%の利率より2.125%低い。なお、再編成によって年間の利息支出が1,740万ドル増加した。

その後の10月に2018年1月に満期を迎える5億ドルのチンギス国債の返済に向けた8億ドルの国債も発行された。期間は5年5ヶ月で、利率は信用改善を裏付ける5.625%となり、マザーライ国債の10.875%の約半分まで低下した。相次ぐ債務再編成によって、少なくとも2021年までは債務不履行の危険は逃れたとみなすことができる。

<債務総額は増加>

2018年6月時点では、5年ぶりに予算黒字を達成し、外貨準備高が前年同期比3倍の30億ドルを超過した。外貨準備高が急増した背景には、モンゴル銀行が買収した金の量が前年同期比9%増の20トンに達したことと対外債務の再編成によるドル流入、直接投資の増加があった。 信用格付けのムーディーズは、これらの変化をプラスに捉え、2018年1月にモンゴル政府の信用格付けをCaa1からB3に、Fitchはその後の7月にB(Stable)に引き上げた。

このように、モンゴル政府の財政と景気の建て直し政策が順調に進行しているとみることができるが、依然と政府の債務返済負担を繰り延べているという課題が残されている。

2017年12月における政府の総債務残高は前年同期比2.1%増の約22兆7,000トゥグルクで、GDPに占める割合は同比2.8%増の74.4%になった。その内訳は国内債務が18.6%、対外債務が74.1%、債務保証が7.3%を占めている。第1にドル建対外債務の比重が大きいこと、第2にドルを流入輸出と直接投資が鉱山業と輸出先の中国に依存していることからモンゴル経済の脆弱性がわかる。

仮に中国の不況を背景に資源価格が再び下落した場合、予算歳入が減少し、財政の不均衡から対ドル相場に圧力がかかり、それが利息支出の増加を招くといった悪循環が再発生するリスクがある。

この脆弱性を克服できるかどうかは、農業をはじめとするその他の産業セクターを発展させ、経済を多様化できるかどうかに大いにかかっている。