TRY FUNDS
白髪亮太

プロフィル:
早稲田大学法学部卒業後、株式会社三菱東京UFJ銀行にて、中小・中堅企業の経営改善、事業承継、M&A、ファイナンス等に関するコンサルティング営業に従事。表彰多数。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社し、大手金融セクターのクライアントに対するコンサルティング業務、グローバルの金融システム構築、金融×ITの業務に従事。株式会社Tryfundsに入社。主に海外進出や新規事業開発に関わるコンサルティング、クロスボーダーを含むM&Aアドバイザリー業務、BIZIT M&Aの制作・運用体制構築業務に従事。2016年9月より取締役に就任。現在は、コーポレート業務を中心に実務統括を担当。

銀行からコンサルティング、それからTRY FUNDSに転職したきっかけを踏まえて自分のキャリア・パスについて聞かせてください。

もともと経営者になりたいというキャリアパスを描いていて、世の中に価値を作れる人になりたいというのがありました。その中で、金融を選んだ理由として経営者を輩出している業界で経験を積みたいと思ったのがあります。金融や商社、コンサルティングといろんな選択肢があったのですが、その当時はリーマン・ショック直後ということもあって、金融のダイナミックさを感じる出来事もあったし、日本で一番大きな金融機関を選んで入社したという経緯ですね。それからコンサルティング、その後にトライ・ファンズに転職しました。

トライ・ファンズはフィンテックやコンサルティング、そしてITを使ったM&Aプラットフォームの構築も手掛けているということで現在の仕事は、そもそもやりたかった経営に携わりたいという趣旨に近いですね。

そうですね、いろんな業種を複合してやっている感じです。私は、立ち上げのころから一緒にやっていますが、やりたかったことがやっているので楽しいです。

最近の国際経済、貿易戦争が繰り広げられたり、次の金融危機の到来が危惧されたりと変動の時代ですが、日本は元気ですか。

企業自体は決算とかをみても業績は非常にいい数字が出ていますが、雰囲気はそんなに良くないですね笑。経済全体に関しては転換期にあるというか、アベノミックスが始まった頃や3、4年前ほどの勢いはないですね。株価だったり、不動産価格が高止まりしていたり、停滞している感じがあります。もしかするとオリンピック前に一回縮むかもしれません。

新興市場に比べると日本はやっぱり停滞している感があるので、トライ・ファンズは日本だけじゃなくてグローバルに成長の可能性を見出すことを目標にしていると理解していますが。

そうですね、まさにトライ・ファンズのやりたいことはそれです。日本は高度経済成長期を経て、当然人口とともに経済も大きくなってきたという背景があります。しかし、これからどうしたって人口が減ってきているのと、今の日本にある富の総量、運用できる預金の大半は高齢者がもっているという特徴があります。要は、お金を使う人たちがお金をもっていない、お金を稼ぎたい人達が稼げないというのが日本がこれから向かう時代だと思うんです。どうしたって儲かれるお金の総量は少なくなっていくので、海外でもっとマーケットを切り開いて、中国や韓国みたいにシェアをとっていかないと今までの日本経済の規模を維持できないのが間違いないです。そういった海外進出をサポートするというのがトライファンズのミッションです。

モンゴルは経済成長率などの数字上は可能性のある新興市場です。しかしビジネスとしてはカントリー・リスクもある上、自然や伝統、お相撲さんで知られているイメージ上のバリアはあると思います。白髪さんからみたモンゴルはどんな国に見えますか。そして、モンゴルという市場を保守的なお年寄りがお金をもっている日本の市場にどうやって売り込みますか。

今回、初めていくので本当にに楽しみですが、数字だけでみると人口とそれに占めるウラーンバートルの人口の比率は非常に面白いですね。一極に集中して、310万ぐらいの人口とその半分以上がウラーンバートルに住んでいるということは、例えば日本の半分が東京にきているとイメージしてみてもすごいです。ウラーンバートルを制したらモンゴルの経済を制することになるのではないかと思いました。

なお、そもそもの人口が少ないので大きい会社にとって攻めづらい。例えば、一人当たり1000円もらっても大手にとってビジネスにはならない。だから、逆転の発想で中小企業、日本の中でももっと拡大する必要がある会社にとって、ウラーンバートルで成功すればモンゴルというこれからの国で成功するチャンスがあるのではないかと思います。

ただ、課題としては何かよくわかっていない。本当にビジネスができるのかというのがわからないというのがあると思います。そういう意味ではMONNICHIさんやTDB東京さんの活動は非常に重要です。

後は、少ない資本からスタートできるというのが大きなメリット。とりあえず一店舗出してみる、とりあえず小さいロットで取引してみることができる。アメリカなどの大規模の経済ではそいうのが難しいですよね。あとは、発電所をつくるとか、他の国では何千億かかるプロジェクト投資や大きなダイナミックづくりはモンゴルだったら何百憶、何千億ではできるかもしれないし、チャンスはいっぱいあると思っています。それが日本では引退している経営者、中小企業にとっては面白い投資、事業運営になるかもしれない。そのようなチャンスを発掘して提案して、現地のサポートまで皆で一貫してやっていけばそいうバリアを取っ払えます。空港内のオペレーション入札の提案等はまさにその実例だと思います。

小さいというのが強みなるとみていなかったので勉強になります。

そうですね、日本側でもそういうニーズがあると思うのでそれを見つけていくのが日本側でやる仕事。

本題ですが、モンゴルの経済は鉱物資源への依存で知られています。その構造は、実は銀行支配の経済ということにも絡んでいます。資本市場は95%とほぼ銀行、そして15%以上の高い金利は他のの産業発展にバリアとなっています。今週、保険会社がはじめて上場するということからみても若い史上ですが、最近特に去年から証券市場が活発になってきているし、フィンテックも登場したりそろそろ銀行のモノポリーが崩れるんじゃないかと思っています。そいう意味でも金融業界の在り方は今後どう変わっていくのか、非常に興味深いテーマですね。

金融に関してはエネルギーとか空気と一緒でそれ自体は絶対なくなりません。ただ、業務を提供する側は既存の機関に限る時代が終わってきていると思います。今まではプロバイダーが強くて、大きな証券市場や従来の大手銀行が提供してあげているという感じでした。これからは顧客サイドで、ユーザーに選んでもらうという形に変わっていきます。しかし、重要なのはやっぱりお金を預けるので信頼性が非常に大事です。新規参入者はどうやってその信用度を維持するのか、というのが一つの課題ですね。

銀行に関してはビルゲイツが「バンクは必要ない、バンキングは必要だ」と言っているのですが、まさにその通りで、銀行は今までいろんなサービスを複合的に提供することによってお客さんを囲い込むという形だったのです。今は、サービスの分割が進み、それぞれの業務ごとに様々なサービスが登場しているので、これからの銀行はサービスに従事るよりはサービスの提供者とお客さんをうまくつなぐ役に変わっていくのではないかと思っています。既存のお客さんとのつながりにはフィンテックやITはなかなか侵入しづらいという面があります。ですから、銀行はその資産を生かして新しいプレイヤーとうまく連携してお客さんに選んでもらえるようにしていかなくてはなりません。トライ・ファンズもモンゴル市場にアクセスできるTDB東京さんと連携しているように、既存の銀行と協力して今までの在り方を変えるパラダイム・シフトを一緒に背負っていくという形ではないでしょうか。なお、繰り返しになりますがその中では新規プレイヤーにとって信用度の維持は一番重要です。

仮想通貨の浸透で中央銀行を中心とした制度がどう変わるのかというのが我々が今立っているステージより3段階上の少し早い話しですが、例えばモンゴルと日本で通じる仮想通貨をつくれたりするかもしれません。それは両政府、両中央銀行の管轄にかかわる問題ですね。今のところ、国境を越えて通用できた事例としてはユーロがあります。