こんにちは、もんにちは。

今日も爺ネタです。
否、時事ネタです。

モンゴル国は、昨日、年利5.625%の8億米ドルに達する国債「ゲレゲー」を成功裏に発行しました。ローンチした時点では、過去の国債を相殺すべく、6.5億米ドルの国債を、6.125%の利回りで発行する予定でしたが、当該債権に対する需要は堅調であり、オーバーサプスクライブとなったことから、発行額の引上げ及び年利の引下げに成功しました。主幹事はクレディスイス、ドイツ銀行及びJPモルガン。

相殺しようとして買入請求をした過去の二つの国債はそれぞれ4.125%と7.5%の年利となっており、単純多重平均では4.9%の利回りだったのを少し上回る金利のように見えますが、もちろん、物事は総単純ではありません。モンゴル国が初の対外国債を発行した2012年と現在では事情は大きく異なっており、格付けも2012年のBB-/B1からB-/Cаа1に2ノッチも下がっているのです。

比較すべきは、むしろ2016年3月に発行されているマザーライ債かも知れません。当該国債は、5年間と、先日発行の国債よりデュレーションが短いにも関わらず、10.875%と非常に高い金利となっているのと比較しても、非常に成功した発行だったと言えるでしょう。ましてや、2016年3月時点からモンゴルの格付けが更に1ノッチ下がっているのですから。

2013年から続いていた外貨の流出は止まり、外貨流入に転換したことや、予想を上回る経済成長となったことなどが主な原因に、IMFの支援などの後援もあり、投資家心理もポジティブに転じたことを裏付ける案件となったと思われます。

石炭輸出に関して、中国側の国境量的規制の影響もあり、2017年7月から輸出量は減っているなど、未だ未だ安心できる経済環境ではありませんが、良い案件でした。パチパチ♪

では、この案件は、一体全体、どのようなインプリケーションを持っているのでしょうか?

外貨流出が続き、既存の国債をどのように返済するかが不透明だった2016年の国債発行案件と比較するのが一番面白いと思います。2016年3月の案件において、国債の発行残高が増えるだけの効果だったため、上記でも書いた通り、非常に高い金利を強いられました。また、トグログに対する信用はがた落ち、トグログ暴落にも繋がりました。2016年にモンゴルトグログは、世界最悪のパフォーマンスとなる30%もの価値を失ったのでございます。

では、今回の発行。まずは、発行残高は殆ど変わらず(既存国債の返済に回されるため)、また、2021年までにモンゴルが海外に支払わなければならない債務がないことから、トグログに対する信用も保たれることでしょう。実際に、国債の返済スケジュールは、以下の通り変わっています。

発行前

 

発行後

 

2021年から3年間で多額の返済が続くことは少し心配になりますが、リファイナンス等も可能でしょう。

また、対GDP比では、現行の5%前後のGDP成長率が続くと仮定した場合(World Bankや専門家は2019年以降は7%を上回る経済成長を予想しており、専門家によって2020年に9%以上を予想する金融機関もありますので、上記仮定は比較的保守的なものと見られます)、年間に返済する額は、それぞれ4.7%、7.5%、5.3%に相当します。決して低い数字ではありませんが、対応可能な範囲と見られます。

では、モンゴル国の債券発行残高はどのように変わったのでしょうか?日本との比較で書くとより分かりやすいでしょう。

日本国の政府借金は総額1,200兆円超と、GDPの230%程度となっています。

今回の国債発行を受け、モンゴルの対外国債総額は、元本のみでは21.5億米ドルから23億米ドル(約2600億円)引上げられ、現在のGDPの約20%となりました。利息支払いも含めると、この数字は、2023年時点で30億米ドルから34億米ドルに引上げられたことになっており、2023年のGDPに対し、19.8%から22.4%に引上げられたことになります。

が、しかし、日本国の政府借金は、国債のみならず、他の形の借金も含まれて、上記のモンゴルの国債の数字と直接比較できません。調整が必要ですね。

日本の財務省のホームページからの予想では、日本の国債残高は平成29年度末には865兆円となる見込みであり、GDPの156%に相当するとのことです。

国民一人当たりに換算すると、日本の借金(国債のみ)は688万円となっているに大して、モンゴルの一人当たりの借金は元本では8.9万円、利息支払いも含めると13万円となるという計算になります。

こう見ると、いかにも日本がやばく、モンゴルが安全なようにも見えますが、物事はそう単純ではありません。

実は、日本の借金の92%程度は、日本国民に対する日本政府の借金であり、対外借金は僅か8%に留まっています。借金大国にも関わらず、金融危機等において、日本円が安全資産とされる理由もここにあります。

では、対外国借金で比較するとどうなるでしょう?

日本国の対外国借金額が一人当たり55万円相当であるのに対して、モンゴル国は8.74万円相当となります。絶対額では、未だ日本の方が高いですね。

ただし、日本は豊かな国であり、一人当たりのGDPも高いのです。日本は443万円なのに対して、モンゴルはたったの42万円と十分の一規模です。これを元に計算しますと、日本は一人の収入の12%に相当する借金があるのに対して、モンゴルは21%の借金となる計算となります。

ちょっと高いですね。

今後、賢い財政政策を行い、経済成長も高く維持しなければ、安心できる水準ではないです。

と、まあ、いつもの「モンゴルはまだまだ課題がいっぱい残っています」というオチで、今回は絞めようと思います。

もんじゃ、また次回まで♪

爺通信でした。