ご挨拶

拝啓

新年明けましておめでとうございます。

旧年度は、モンゴルにとって、変革と回復への一年となりました。モンゴル国の格上げをも含め、経済的な安定性への道のりもその証と言えましょう。モンニチ・トゥデイ・チームとしても、プラットフォームの発足から、フォーラムの成功裏の実施に至るまで、いろいろとお世話になりました。
旧年中は格別なご高配を賜り、まことに有難く厚く御礼申し上げます。 
本年も、より一層のご支援を賜りますよう、チーム一同心よりお願い申し上げます。

さてと、今年度は、皆様と我々のビジネスが益々繁栄出来ますよう、今後とも情報を発信して行きたく存じております。

元旦の発信として、まず、2019年のモンゴルの経済・政治環境の見通しを我々ながらご提供頂ければと存じております。

ぜひ、今年度のビジネスに役に立てれればと存じます。

よろしくお願いいたします。

敬具

モンニチ・トゥデイより

政治
2018年の政治を特徴つけたのが、2021年に100周年を迎える与党モンゴル人民党の分立だった。党内分立は、大統領選挙に敗れた党首エンフボルドに32の派と言われる現首相フレルスフ派から責任を追及し、エルデネバット内閣が解散したことにより表面化した。中小企業促進基金騒動に因んだフレルスフ内閣の不信任決議案が一旦却下されたが、与党内対立とそれによる政界混乱が2019年前半にも持ち越される見込み。国際的な競争力を備えた産業が育っていない経済が内蔵する問題として、国家予算投資や鉱物資源へのアクセスをめぐる政治ビジネスグループの対立がこういった変動の底にある。2019年には、エンフボルド議長が辞任してもこういった資源アクセスをめぐる対立が沈静しない確率が高い。それは、第1にタバン・トロゴイをはじめとする鉱山運営への利害関係衝突が激化する可能性、第2に2020年度の国会総選挙予算源のための財政管理権を狙う政治が再発する可能性があるからである。各政党や政治家の違法行為、汚職問題に対する世間の怒りが高まるほど、政治的な色を浴びた各法執行機関の衝突とその背景にある国会体制が抱える諸問題が浮き彫りにされていくに違いない。内閣に対しては中小企業促進基金に携わった大臣や役員への懲罰が問われ、それがフレルスフ内閣を解散に追い込む結果をもたらした場合、最悪の場合国会解散の可能性もゼロではない。これらのトレンドの行方は、首相フレルスフが公平性を強く求める社会に認められる政策を実施し、党内の地位を固めることができるかどうかに大きくかかる見込み。

社会福祉
上記のように、立法機関、法施行機関が政治的な理由で麻痺した状況において、2019年1月以降国会審議が予定されているいくつかの法案が成立しない恐れがある。特に、中小企業促進基金をはじめとする29の特別基金の横領問題で国民の信用を失った内閣府や国会の説得力は非常に弱っており、2019年1月から施行予定となっている社会保険料の引き上げの妥当性を問う声も高まるものと考えられる。2018年1月に所得税引き上げが適用されると大規模の反対運動が巻き起こったのと同様に、2019年1月から保険料引き上げが適用されると特に中小企業等にとって重荷となってきた当該保険の支払いに対する反論が巻き起こる可能性がある。他方、党内対立や中小企業促進基金騒動等で知名度を落とした与党モンゴル人民党からIMFとのEFF措置の取り決めが制約を課す中でも選挙年を迎えた一時的な福祉措置を取る可能性も否定できない。

貿易
モンゴルは、輸出額がほぼ90%鉱物資源に、その90%が中国に依存する形となっている。その貿易相手中国が化石燃料から再生エネルギーに移行する方針を固め、2019年において石炭等の輸入を制限することが明白になった現在、モンゴルの主要輸出品である石炭の輸出量に制限がかかる可能性が高まった。また、ロシアから石炭の代替品である天然ガスの中国への輸出が増加し、北朝鮮等の国への経済制裁が和らぐなどの拍車もかかることから、モンゴルの輸出産業にとって、2019年は2018年ほど良い年とならないものと考えられる。

2018年においては輸出量よりも輸送容量による制限の方が重く、石炭を積んだ輸送トラックの130キロにも上る渋滞とそれによる人権問題が問題視された。それに対して政府は、長年議論の的となってきたタワン・トルゴイ~ガ シューンスハイト間の鉄道建設を復活し、シベーフレン~セへ国境間の鉄道も2019年度中に開設する方針を打ち出した。世界と中国という主要市場の石炭需要が低下していくことが予測される中、2019年はモンゴルにとってインフラ整備と鉱業物の付加価値の製造が今まで以上の課題となる年となろう。

法律
2018年10月1日に開会した秋期国会の予定表には、税法、法人所得税法、個人所得税法、投資銀行法、内閣特別基金法改正といった比較的に経済の基盤にかかわる重要な法律が含まれた。国家体制については、モンゴル社会が抱える諸問題の根本的な原因を憲法に求める声が多く、国会開会当時は憲法改正に関する議論が積極的に繰り広げられた。大統領制と議院内閣制の比較を討論している最中、中小企業促進基金騒動に続く与党分立が深化し、内閣府不信決議案が提出され、64議席を有するモンゴル人民党の政権下に憲法改正が成立する可能性が薄れてきた。既存の体制と2大政党の支持率が究極に下がってきた中、今期の国会で審議される予定となっている国会選挙法、大統領選挙法が果たして制度前進をもたらす形で成立できるかどうかには疑問点が残される。投資家にとって大事な鉱業ライセンスの税率の引き上げ(30%まで)と高い資本金を基準としていた投資銀行法も後回しにされており、海外投資家等の強い抵抗の下、2019年に再度見送られる可能性が高まっている。

貨幣政策・通貨
一方で、2019年の貨幣政策については、モンゴル銀行が引き締めた財政政策を行う方針が定まっている。2018年11月27日に政策金利を1%引き上げた11%とし、また銀行が消費者に貸し出しできる上限を収入の70%を超えないものにする等の措置が適用されている。市場に出回るトゥグルクを制限することで、各外国通貨に対して弱含みしていたトゥグルク強化を実施するものと見られる。2019年において、引続き米国金利が高水準に推移すること、ドル調達の割高感が薄れないこと、中国の石炭市場規制強化が行われることにより、輸出が伸び悩むこと等のトゥグルク安に貢献する海外要因が多い。そういった中、これらの措置は成長期の過熱感が取れない経済においてインフレ抑圧を狙う政策だと見られる。また、IMFのアセット・クオーリティ・レビューの結果、各銀行が貸倒引当金を積まざるを得なくなったことからもトゥグルクが市場に出回りにくくなると考えられ、為替レートは比較的安定的に推移するものと考えられる。

財政・国家予算
2018年中は、信用格付け機関Moody’sがモンゴル国債の長期信用各付けをB3に、S&PもB(Stable)に1段引き上げた。これには、外貨準備高の増加、金融環境の安定化、予算管理の改善が影響したという。しかし、2019年度国家予算は歳入が9兆6,765億トゥグルック(GDPの27.4%)、歳出が11兆5,898億トゥグルク(GDPの32.8%)、その結果予算赤字はGDPの5.4%に当たる1兆9,133億トゥグルクとなった。予算歳入に関しては、主要輸出品石炭の輸出量を30.4%増の4,200万トン、鉱物資源からの収入を1兆300億から3兆円まで増加すると前向きに見積もっているが、中国のエネルギー政策を背景にそれほど増加しないリスクも視野にいれなければいけない。予算歳出に関しては、国家予算投資が前年の6,833億から1兆2,176億トゥグルクまで増加し、中ではそのFSや予算見積もりが未熟なものが多いと国家監査局から指摘があった。野党民主党からは現行の選挙法では小選挙区制度によって行われることになっている2020年の総選挙を視野に入れた各議員当ての投資予算を増やしたとの批判がある。政権後退前の2016年に比べて各経済指標に改善があるものの楽観的な収入見積もりと予算赤字補佐が鉱物価格や国際機関の貸付といった外部要因に依存している点に留意しなければいけない。