こんにちは、もんにちは。

ゾリゴです。

今日は、またもや、来月と再来月から有効となる小規制等について語りたいと思います。

「モンゴルの法律は三日間」という比喩があります。

本来は、広大な国土を有するにも関わらず、モンゴル国で法律が発令されると、三日後には国全土わたってそれが有効となったことを指す、モンゴル帝国の政府・政治の強さを示す諺だったそうですが、国が廃れるにつれて、「モンゴルの法律は発令されても、三日後にはそれを守る人が皆無になる」という意味合いで使われるようになったそうです。

近年のモンゴルの法律等について、残念ながら後者が当てはまる節があります。法案を準備するにも十分な時間と調査もなしに思いつきでやってしまい、発令されてからはまさしく「法律は破るためにある」という名言通りになってしまうという悲しい現実があるかと思います。

その一番分かりやすい例として、タバコを禁じる法律。「学校敷地から500メーター以内でのタバコの販売及び喫煙所の設置は禁ずる」となっていますが、ウランバトル市内で考えると、喫煙できる場所皆無となってしまうのです。本来は分煙、喫煙を促すのための法律であり、その趣旨こそは素晴らしいものなのですが、法律が有効に守られるかどうかを全く配慮しないで発令されたため、法律を守らせる勤めをする警察でさえ、この法律を自ら犯すことが多いのです。せめて喫煙室の設置を義務付けるなど、逃げ場を作ってくれないと、守られない法律となってしまうためです。

さて、本題。また似たような事例が二つ増えました。

まずは、2019年3月1日からビニール袋の使用を禁ずる規則。

自然に優しくなる、国外へのビニール袋の代金等が流出しなくなる、手提げ袋の生産等で中小企業にも収益が回りやすくなるなどと、趣旨そのものは分かりやすいし、非常にありがたいものでありますが。。。果たして、上手く、有効的に守られるものでしょうか?というのが疑問です。最初のうちは上手く実現するでしょう。でも、長期的にそれを守らせられるか?というのが疑問です。まあ、大手スーパー等が守り始めたら、それなりに有効的に守られるかも知れません。

もう一つは、先日ウランバトル市役所から発令されたタクシー料金の改正規制。2019年2月1日からウランバトル市内でのタクシー料金を初乗り1500トグログ、追加一キロごとに1,000トグログとすることを発表しました。

皆様、お気づきになっていると思いますが、ウランバトル市でタクシー運搬会社が非常に少ないです。その代わり、白タクごと、個人タクシーというか、個人がヒッチハイク感覚でタクシーをやっているのが非常に多いです。彼らは、タクシー業務で生計を立てているかというと、必ずしもそうではありません。ただ、空いた時間に副業として、小銭稼ぎとしてやっている人が大半です。

これには、もちろん良い点と悪い点があります。

良い点としては、市場がほぼ完全競争に近いため、消費者としてはタクシーを安く使用できる点。気軽にタクシーを拾える点などが挙げられますが、それより有害な点の方が目立つかと思うのです。

まずは、これらの副業から得られる収入に課税を課すことはほぼ不可能となっています。また、正式なタクシー業者がメンテナンス代や利益、また税金等を含んだ料金設定をしたいのに、これらの「小銭稼ぎ」の個人タクシーと料金競争をしなければいけなくなり、事業として失敗してしまいます。加えまして、メーターが搭載しているタクシーがほぼないので、料金をめぐるトラブルや、安全性の問題といったさまざまな問題を抱えているのが現状です。

また、タクシー料金が安いことが、その他の公共輸送機関に発展に悪影響を与える点からも、ある程度の規制は必要不可欠と思います。

ただし、やはり、規制に関する考え方が甘い気がするのです。

まずは、ウランバートル交通局はタクシー会社への影響力はあるとしても、個人タクシーへどのように働きかけるかが全く不明なのです。タクシー業界の需給の9割が闇市場的なものとなっている現状、そう簡単に取り締まれると思えないのです。タクシーのライセンス化、量的規制(タクシー会社は最低何台かのタクシーを有する義務)、メーター搭載義務、料金明示義務、課税義務などを詳しく規制せずに、また、違反した場合の懲罰等についても詳細が不明な中、ただ料金だけを上げても、どのように規制を守らせるのかが非常に不可解です。良い点としては、少なくとも空港での白タクの規制は行われるであろうが、それ以外の個人タクシーを誰がどのように監視するのか不明瞭なのです。「また破るためのルールを作ったなあ」と思ったのが正直な感想です。

もう一つは、直接的に料金に干渉するのはどの程度有効かという疑問です。インフレ率年間8%の国で、ガソリン等の料金は輸入に頼りきった状況で、料金は市場に決めさせるべきだと思うのです。最低料金としての規制であればわかるのですが、料金そのものを役所が決めちゃうのは、どの程度現実的なのか?という疑問です。それとも、毎回毎回料金に干渉し、それを変えるのか? ゲームルールだけを決めて、後の詳細は市場に任せるべきなのでは?

と、全体的に、これらの規制の目的意識と趣旨には賛成するものの、手段としての未熟さが目にあまるしだいです。

タクシー料金だけではありません。

昨年の「インベストモンゴリア」フォーラムでもパネルディスカッションで挙げられたように、モンゴルのインフラの料金体制に問題点は多いのです。

電気料金、水道料金、下水料金、鉄道料金など。過少に設定されていることが非常に多いのです。

発電所の建設プロジェクトは予定されるも、なかなか完遂しない現実の裏に、これらの料金設定の問題が隠されていることが多いのです。電気料金の設定は、1960年代に建設され、減価償却費が全くかからない火力発電所のオペレーティング・コストのみに基づいて設定された料金では、新設の発電所は利益を生むことは不可能ですし、利益が不可能となると、そこに投資する民間企業等もなくなると言う構造が出来ているのです。2013年からかれこれ6年にもわたり料金の自由化が課題となっているのですが、料金の自由化=料金の値上げ=国民の反感と言った構造の中、勇気を持って制度改正をする政治家がいないことも問題の発端となっています。よく「モンゴルの電気料金が安いので、ブロックチェーンやビットコイン発掘をモンゴルにする方が良い」と言う議論が聞こえて来ますが、ここに「安かろう、悪かろう」と言うリスクも存在します。確かに石炭が非常に安価で提供可能なモンゴルでは電気料金は他の国より安く提供できますが、現状の料金はそれをも下回る水準であり、メンテナンス等の安定的な供給には向いているないと言うリスクも考慮しなければいけません。

水道に関しても、水を汲む費用だけで1リトル辺り4トグログもかかるのに、ゲル地区の配水拠点での水料金は2トグログと、常に赤字状態となっており、これらの事業に参入しようとする民間企業が皆無となっています。

下水料金にしても同様です。メンテナンス費用を全く考慮しない、オペレーティング・コストのみを考慮した料金設定のせいで、下水処理プラントも満足にメンテナンス、アップグレードできず、ここ数年、ウランバトルの冬は煙で、夏は下水で臭いという状況が続いていました。昨年に、中国からのローンで下水処理プラントのアップグレードに取り掛かりましたが、本来ならば、これらの将来的なメンテナンス費用、拡大費用等も鑑みた料金設定をするべきと思うのです。

そして、鉄道。新鉄道プロジェクトを担当していた2013年、2014年に道路交通省と何回かに渉る大喧嘩をしたのは記憶に鮮明です。そのとき「鉄道料金設定ワーキング・グループ」なるものを立ち上げ、料金設定のルールを決めるチームに私が入っていたのですが、私のほかに、省の役員や、ウランバトル鉄道のエンジニアさんなどもそのワーキング・グループに入っていたのです。

まず、無茶ナンバーワン。戦略的なインフラ設備である鉄道のライフラインとなる料金設定ルールをたった二週間で調査し、設定しろと言った命令だったのです。他国の事例や、原理等も調査して、それに順ずるものにするべきだという主張も通らず。。。

そして、無茶ナンバーツー。ウランバトル鉄道のエンジニア等、社会主義的思想を有する人が多かったため、彼らに「減価償却とは!メンテナンス費用とは!金融費用とは?」などを分かって頂くのは非常に難しかったのです。1940年代に建設された現行のウランバトル鉄道の減価償却費用の考え方と、新設鉄道の減価償却費用は異なること、当時のソ連から無償で提供された金融費用と、市場から調達する金融費用はどんなに違うかということ、市場の調達費用も一定ではなく、常に変わっているため、せめて国債のイールドをベンチマークとする必要があることなどなど色々説明が大変でした。

鉄道料金だけでもこうなのだから、それ以外のインフラ料金に関してもみんな旧式な、社会主義的な思想を有しているに間違えないと感じましたが、今回のタクシー料金規制に関しても、それが再度確証されたのでした。

モンゴルのインフラは格安です。いいえ、激安です。ですので、それを上手に使い、費用を低く事業を行うことは可能でしょう。また、規制がかかっていないような業界も多いので、それを良い機会として使うのもありと思います。

ただし、これらには根本的な問題点もあり、将来的なリスクにもつながることも知ってもらいたく、今回のコラムを書きました。

もんじゃ、次回にて