東京からきた日本人の方が私に聞きました。どうしてガソリンスタンドはあんなに行列ができるのか、と。今週から落ち着きましたが、確かにどうして行列ができたんでしょうか。そして、どうして落ち着いたんでしょうか。

モンゴルではガソリンの需要は自動車が増えるにつれて増える一方ですが、価格は政府によって管理されています。一般市民がもっともよく使うAI92燃料ですと、2012年の後半から1リットル1600トゥグルグ台で維持されてきました。2012年の後半というと原油一バレルの国際価格が2016年の約3倍に当たる100ドルを超えた時期ですね。1バレルの価格が100ドルでもモンゴルの小売り価格が1リットル1630トゥグルク、30ドルでも1630トゥグルクに固定されていたということになります。こういうことは、モンゴル政府が石油の原価が上がると輸入業者に補助金を供給し、原価が下がると特別税を引き上げるなどして介入しているから可能となっています。

今回の行列は、このようにして調整されてきた価格の設定をめぐって政府と輸入業者の間に駆け引きが生じたことの現れです。駆け引きが生じるのも当然の成り行きとみることができます。国際原油価格高騰の2012年は、モンゴル銀行と鉱山省が共同になって「燃料小売り価格の安定化というプログラム」を実施しました。価格安定化プログラムとは、モンゴル銀行が輸入業者に安いドルと低金利貸し付けを供給する仕組みを意味していました。モンゴル銀行や政府は営利組織ではないので高いドルと高い金利の差額は赤字になり、国民が負担することになります。燃料小売り価格安定化プログラムの実施からモンゴル銀行は、約4,000憶トゥグルクの赤字を負いました。

幸い、2014年の後半から輸入原価が急減し、大幅に増えていた予算赤字の一部を原油特別税を引き上げることによって賄うことができました。それから2016年の価格復活を受けて2回にわたって特別税を切り下げました。しかし、IMFのEFF措置が確定するに当たって予算赤字の削減策として特別税の引き下げを取り消し、AI92には一トン19万トゥグルクの特別税をかけることにしたのがつい最近の2017年11月。しかし、国内市場の価格をどうにかしても国際価格はどうにもなりません。原油一バレルの価格が再び高騰し、2016年の初頭に比べると2倍の60ドルを超えました。こうなると、1リットル1630トゥグルクには高い原価と高い税金の両方を含めることができなくなってきます。そうして経済的に無理のある価格に対して供給不足が生じ(政府に圧力をかけるために危機状況をつくったという仮説もあります)ガソリンスタンドで行列が生じました。

寒いにしても平均よりも寒い真冬の日々。そもそも税金の引き上げや渋滞でストレスが溜まっている国民にはガソリンを買うための行列は全然楽しくありません。政府は一歩下がり、AI80とAI92の特別税を0にし、行列はいったんは解消しました。そして、内閣は長年議論されてきた原油加工工場を建設する方針を打ち出し、1月26日の国会で審議されました。

原油輸出者でありながら加工燃料は100%輸入に頼っているモンゴル。長期的に加工工場が作れるかどうかまだ分かりませんが、少なくとも2018年には石油高騰のエンジンとなっている中国の石油需要が増える見込みである。今後、原価の上昇が続けばどこかの時点で価格の変動を認めるざるを得ません。そうすれば、輸出鉱物の価格や国内の消費価格に影響してきます。国際価格に加え、国内では政府と輸入業者の関係の在り方が要注意です。